代表者のご挨拶

東京医科大学茨城医療センター 共同研究センター
教授 本多 彰

胆汁酸研究会は、研究発表と情報交換を通して胆汁酸に関する基礎的、臨床的研究と診療の発展に寄与することを目的として、1979年(昭和54年)に設立された伝統ある研究会です。初代会長の故山村雄一先生(大阪大学)、第二代の故大菅俊明先生(筑波大学)、第三代の牧野勲先生(旭川医科大学)、第四代の滝川一先生(帝京大学)の後を引き継ぎ、2023年より会長を拝命いたしました。

胆汁酸は動物の肝臓にてコレステロールから合成される生体石けんです。水に溶けないコレステロールを水に溶ける形に変換して胆汁中に排泄し、生体のコレステロールバランスを調整しています。また、小腸に達した胆汁酸は、その石けん作用によって脂質の消化吸収を助けると共に、腸内細菌の異常な増殖を抑える重要な働きをしています。最終的に胆汁中に分泌された胆汁酸の約95%は、回腸遠位部から再吸収されて肝臓に戻るという腸肝循環をしています。一方、胆汁酸は、核内受容体(FXR, PXR, VDR)や膜受容体(TGR5)のリガンドとなり、胆汁酸自身の合成や腸肝循環の量を制御すると共に、糖・脂質代謝や炎症などに関与する生体のさまざまな生理活性物質を調節し、ホルモンと同様の働きをしていることも明らかになってきました。

わが国の胆汁酸研究の歴史は、1927年(昭和2年)の岡山大学生化学の清水多栄教授一門による熊胆からのウルソデオキシコール酸(UDCA)の単離・結晶化から始まったと言われています。基礎的な胆汁酸研究はその後も鳥取大学や広島大学に引き継がれ、日本各地での研究に発展しています。一方、臨床的には1970年代に胆石溶解療法としてケノデオキシコール酸(CDCA)やUDCAの有効性が報告されて以降、胆石症にとどまらず、胆汁うっ滞症や先天性胆汁酸代謝異常症など、胆汁酸に関する多くの臨床研究が行われています。日本の胆汁酸研究には世界に誇ることのできる成果が数多くあり、また海外でのエポックメイキングな発見にも多くの日本人が関与しています。

本研究会は研究成果の発表だけでなく、活発な意見・情報の交換や親睦を深め、海外に対抗できるオールジャパンの共同研究に繋げることも目標のひとつです。胆汁酸研究は難しく取っ付きにくいとの意見をしばしば耳にしますが、少しでも胆汁酸に興味があれば、是非胆汁酸研究会にご参加いただき、世話人に何でもご質問ください。世話人一同、伝統ある我が国の胆汁酸研究の継続と発展を心より願っております。

最新のお知らせ

2024.01.04 世話人のページを更新しました。
2023.11.27 世話人,学術集会, 会則のページを更新しました。
2023.09.08 第44回胆汁酸研究会の演題募集が開始されました。
2023.07.03 ホームページを開設しました。